2016年7月29日金曜日

WWⅡアメリカ海軍艦船迷彩色セットの魅力をモデルアートさんに聞いてみた!!

こんにちは、担当Sです。
すっかり暑くなり、いよいよ夏本番!!という感じですね。
充実したホビーサマーを過ごされていますでしょうか?

さて、夏と言えば、レジャー!プール!海!!
というわけで、

7月20日に全国一斉出荷となった「Mr.カラー特色 WW米海軍艦船迷彩色セット1&2」!



この商品に関し、「月刊モデルアート」より編集部の内藤純一氏と営業部の戸倉健氏の両名に魅力を語っていただきましたので、今回はそのインタビュー記事を掲載いたします。

左より月刊モデルアート編集部 内藤純一氏、営業部 戸倉健氏


ーーー本日はお忙しいところ、ありがとうございます。

モデルアート 内藤純一(以下内藤)よろしくお願いいたします。

ーーー「Mr.カラー特色 WW米海軍艦船迷彩色セット1&2」に際しては企画段階からモデルアートさんに色々とお世話になっているんですよね。企画が提出された時から、そもそも大戦期アメリカ海軍の迷彩色をなぜ今やるのかというのが弊社の中にもあったんです。そのリサーチ段階で早速モデルアートさんにご相談致しました。

内藤 需要はあると確信していました。
アメリカ海軍の艦船はキットも一定数発売されていて、その愛好家も一定数いらっしゃいましたし、この迷彩色自体、色味は違えど他のメーカーさんが発売していたり、と、米海軍模型の製作シーンは元より日本にも根付いていました。しかし、キットの指定色だと調色をしなければならないとか近しい色味で代用するしかなく、発売されている専用色というのも、どうも個々人がイメージする色味に合わないと指摘されることが多いなど、日本海軍の灰色一色のハッキリとした船体色に比べると決定的に安心できるものがなかったというのは大きなハードルだったと思います。

ーーーキットの指定色があっても、満足できなかったのですか。

内藤 指定をされていても各メーカーさんで色味がバラバラであったり、もちろん実物とは違うんですが、米軍の記録では割とカラーの写真が多く、指定色で塗ってみると、どうも明るいな、暗いな、彩度が違うなというのは多くの皆さんが感じていらしたところだと思います。
米海軍艦船に限らず、迷彩塗装は特に誰しもが気になる部分。パターンや色味は、皆さんリサーチしていると思うんですが、今まではその指標になるものがなかったのです。
この米海軍艦船迷彩色セットはリサーチと調整が重ねられて皆がある程度納得できる色味になっているので、ここから自分でアレンジすることができる。何もないところから自分で調色すると二度と同じものを作る事ができない。
その基準点を作ってもらえたのは本当に大きいです。

出来上がった製品を前にして感慨深げな両名


ーーーお二人は各地で開催される展示会で沢山の作品を見ていると思うんですが、同じスケールで、同じ迷彩システムで塗装されている筈なのに、ここの作品で全く色味が違うというのはあったのですね。

モデルアート 戸倉健(以下戸倉)それは船に限らず、飛行機にしても、戦車にしても、そういうのはあります。そこは好みの世界ですので、作れる人は自分の好みで見つけられるんですけれど、とりあえず自分でやってみようという人にとっては厳しい世界でしたよね。

ーーー米海軍艦船については、迷彩に使用されている色そのものの難しさはあったかもしれません。セット1の4色、セット2の3色、基本的には全てブルーからブルーグレーですが実に微妙な色合いです。このガンビア・ベイ一つ見てみても、日本の艦船と比べると迷彩パターンが本当に複雑ですよね。これをしっかりと塗り分けつつ色味を調整しなければならないのは、米海軍艦船の製作意欲を減退させる要因としてあったのでしょうか。


戸倉 それはもう、ありありと・・・(笑)

内藤 この特殊な迷彩パターンが好きだから、この船が好きなんだ、と思っても、実際プラモデルで作るとなると、この塗り分けをマスキングして、さらに何色も重ねて・・・、そんなこと自分に出来るのかな?と皆さん尻込みしてしまうんですね。組み立ては誰でもできます。やっぱり単純なパターンの迷彩に逃げてしまいがちです。だからこそ、こういう迷彩ができるだけで一目置かれるようになります。

ーーープロモデラーでもある内藤さんから見て、この迷彩パターンを塗り分ける作業自体の難易度は正直に言ってどれくらいなんでしょうか?

内藤 正直やりたくないですよね(苦笑)

(一同笑)
複雑怪奇(?)な米海軍の迷彩パターンについて熱弁する内藤氏。
過去の作例の苦労など、ここでは書けないことが多すぎます(汗)


ーーー今までいくつも完成品を作っている内藤さんでも思うんですね。

内藤 これは声を大にして言いますが、間違いありません(笑)マスキングに限らず、どこを取っても大変なんです・・・。
その分、できあがった時の満足度はとても大きいんです。戸倉くんは、飛行機でいうところ、ビゲンとかの森林迷彩なんてやりたくないでしょ?

戸倉 やるにはやったこともあるんですが、実は塗ったところで力尽きて、デカールとか貼れていないんですよ。マスキングテープを剥がす時が快感で、「やったー、ここまでできた!」と思っていても、どこかでパターンがズレていたりすると、心が折れてしまいますね(笑)

内藤 直線的なものであれば、どちらを先に塗るかというパターンさえ見つければ簡単なんですが、曲線が多いとね・・・。

ーーー調色の難易度は下がっても、塗り分けがキモのようですね。このカラーセットと併せて買っておきたいツールは何でしょうか。

内藤 マスキングテープはもちろんなんですが、マスキングゾルはあった方がいいですね。細かく貼り合わせた部分から吹き込んでしまうおそれがあるので。

ーーーマスキングシートは必要ないんでしょうか。

内藤 メーカーさんの塗装図を原寸大にコピーして使用するのであればあった方がよいかもしれませんが、マストではありませんね。それと、剥がす際に使用するピンセットもできれば先の尖ってない方がいい。剥がす際に船体に刺さるおそれがあります。

戸倉 せっかく塗り分けたところをガリッてやってしまうことありますよね。複雑な分だけ、リカバーもめんどくさくなってしまう。

内藤 2時間かけてマスキングして、1分で剥がしたときにガリッとやってしまうと、これまた心が折れます(苦笑)あとはメタルプライマーが欲しいところです。一回船体に吹く、その上から塗料を塗ると食いつきが段違いです。フワッとかけてあげるだけでいい。厚塗りすると、ひび割れのおそれがあります。で、ベロッと剥がれちゃうんですよね。僕としては下地のサーフェイサーは絶対に必要というわけではないと思います。

ーーー今回のカラーセットはグレー寄りの色味で構成されているので、一部にのみグレーのサフを塗装すると、かえって目立ってしまうかもしれませんね。サフ吹きするとしたら、最後はホワイトサーフェイサーで締めてあげたほうがいいのではないかな、と。

内藤 それはあるでしょう。下地がホワイトであれば、上掛けした塗料の見た目明度も上がります。そこにウェザリングを施すことで明度が落ちるので最終的な見た目はしっくりくると思います。そう、明度に関しては大事なことですが、迷彩色の明度を調整したならば、艦底色の明度も合わせて変えてあげること!上が明るいのであれば、下も合わせて明るくしてあげないと、妙なコントラストがついてしまいます。ここを気をつけるだけで全く見栄えが違いますよ。これは艦船模型全てに言える事ですね。

ーーーモデラーの皆さんの中にはスケールキットを製作される際に資料をリサーチされる方も多いと思いますが、では、このカラーセットを使用する際には、何を参照すればいいんでしょう。飛行機や日本の艦船に関してはモデルアートさんからも相当数に資料が出ているんですけれども、正直なところ、こと大戦期の米海軍に関しては圧倒的に数が足りていないような気がしております・・・。

内藤 (持参した「艦船模型スペシャルNo.39」を示して)これ、まだ在庫あるんだっけ?

戸倉 もう厳しいと思います。

内藤 では、何らかの手段で艦船模型スペシャルのNo.39か、No.9をゲットしてください(笑)艦船模型スペシャルには、まとまって図面が乗っているんですが、和書だとこれくらいでしょうか。洋書だとスコードロンシグナルとか、最近だとインターネットもよいでしょう。現アメリカ海軍のNaval History and Heritage Commandhttps://www.history.navy.mil/が、非常に詳細ですよ。ここで艦番号と併せ”camouflage”と入力してみてください。例えば、このガンビア・ベイであれば”CVE-73 camouflage”。このように検索すると求めていたズバリの資料に行き着きやすくなります。餅は餅屋ですから、日本の船を調べるのであれば日本のサイト、ドイツの船を調べるのであればドイツのサイトといったところですね。

艦船模型スペシャルの過去特集には、迷彩色それぞれのスペックや調色方法が
事細かに掲載されていました。現在では実に貴重な資料です。


ーーーミリタリー用語を外国語で調べるのは難しいですが、これを機に海外ウェブサイトでの情報収集にトライしてもらえると嬉しいですね。しかし、モデルアートさんはこの号を再版してくれないんでしょうか?(笑)

内藤 艦船模型スペシャルはムックではなく雑誌なので、そういったことは難しいのです。もしかしたら様々なイベントに出展のモデルアートブースで、様々な事情で倉庫に眠っていた在庫が蔵出しで販売されているかもしれません。ですから、ぜひ皆さん、モデルアートのブースに遊びに来てください!初日なくとも、2日目にはあるかもしれませんよ。

戸倉 古い艦スペも出てくる可能性も実はあるんです。でも全てワケあり品ですので、そこはご了承の上で。

ーーー最後にユーザーや読者の皆さんにメッセージを。

内藤 このセットは大戦期の全ての米海軍艦船に使えますので、セット1とセット2は両方お求めください。セット1の4色で完結する場合もあるでしょうが、いつか他の艦を作りたいという時には必ず買うことになるので、あらかじめ持っておいたほうがいいですよ。バラけさせ具合もいい感じになっています。

ところでクレオスさんから英海軍カラーセットを発売しませんか。英海軍も現状発売されているキットは近似色でしかないですからね。
イギリスの迷彩色はとても面白いですよ。大戦期は目視での戦闘で、艦船の迷彩は距離や方向の感覚を欺瞞させるものでした。イギリスは濃霧が発生しやすいので、それに所以するところもあるのでしょう。アメリカが太平洋の気候に即した合理主義的な迷彩とすると、イギリスは「どうしてこうなった!?」という奇抜なものが多いのが面白いです。ちなみにドイツ艦船の迷彩は角ばっています。

戸倉 国ごとに迷彩の設計思想が全く違うのが面白いですね。

内藤 アメリカ、イギリスは迷彩としては正攻法なのに比べ、日本は武士らしさを求めたのか、甲板をそっくり田んぼに見てていたり・・・。
とにかく迷彩は楽しむものですね。どうしてこうなったのか、様々な背景に由来して全てに意味があるんです。

戸倉 もはや笑えるものもあるのも、それまた楽しい。塗って完成したものを眺めて、これはおかしいだろうと思うのも一つの楽しみです。

内藤 あと木甲板色セットも欲しいです。デッキタン、サンディブラウンとか・・・、ちょっとしっくり来ないことが多いので。
アメリカ艦船迷彩色セットは3を発売してもらいたいので、ぜひ皆様、1と2をよろしくお願いいたします。ブラウンウォーター・ネイビーとか、魚雷艇セットなどなど・・・(笑)
とにかく、飛行機、艦船、全部含めて、指標となる塗料がない色がまだいっぱいあります。生で塗って楽しい、ここから自分だけの振り幅を作れる、そういう基準点を作れるカラーが今後どんどん増えていけば嬉しいですよね。


ーーーそのためにはモデルアートさんのご協力は不可欠ですよね。是非とも今後ともよろしくお願いいたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(2016年7月20日 GSIクレオス本社にて)

今後の商品展開に妄想(!?)をめぐらす内藤氏、戸倉氏。
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